困った顔をした男の子

【居抜き・スケルトン】どっちがいいの?店舗物件選びの基本を知ろう!

店舗を開く際に、貸店舗を探すとよく見かける、「居抜き」「スケルトン」という言葉。何となく想像はつくけれど、この違いがよくわからないという方もいるのではないでしょうか?

どのような状態の物件を選ぶかで、店舗設計にかかる費用は大きく変わるため、選択によってはその後の出店計画にも影響してきます。

「居抜き」と「スケルトン」ってどう違うんだろう?
開業(開店)するならどっちがいいのかな?

この記事では「居抜き」「スケルトン」について、それぞれの説明とメリット・デメリット、さらに物件選びのポイントについてご紹介していきます。

Contents

「居抜き」「スケルトン」とは?

家の上に?が書かれたイラスト

貸店舗物件は大きく分けて「居抜き物件」「スケルトン物件」の2種類があります。「居抜き」「スケルトン」とは新しい借主へ物件が引き渡される際の、店舗物件の内装状態を表します。

まずは、「居抜き」「スケルトン」それぞれの状態を説明していきます。

「居抜き」とは、前の店舗内装設備などがそのままの状態

「居抜き」とは、前のテナントが使用していた天井・壁・床・厨房・トイレなど、店舗の主要な内装設備・什器・備品といった造作物がそのまま残っている状態のことをいいます。内装設備・造作物が残っている状態で売り渡したり、貸し出したりする物件のことを「居抜き物件」と呼びます。

多くの賃貸物件は、退去時には借りた当時の状態にする「原状回復/原状復帰」が必要です。しかし、次の借主が、内装設備類の継続使用を希望した場合や、オーナーが内装設備のある状態を売りにして貸し出す際には、内装設備・造作物をそのまま残した状態で引き渡します。

▼よく似た「残置物件」に注意!▼

設備類が残っているため、見た目には居抜き物件と間違いやすいのですが、居抜き物件と残置物件の違いは、現在も営業しているかどうかです。

現在は営業しているが、数か月後には閉店することが決まっており、すぐに使える状態で引き渡されるのが「居抜き物件」

既にお店は閉店しているが、閉店から時間が経ち、設備や残置物のある状態なのが「残置物件」

残置物件は、長い期間次の借り手がなく、シャッターを下ろしたまま空き家のような状態になっているので、物件そのもの、また周囲からの印象もあまりよいものではありません。また、残置物件は物件としての価値も、一般的には低いといわれています。

残された設備やエアコン、内装が長い期間使用されていないなどの理由で状態が悪く、使い物にならずにかえって撤去、修理といった余分なコストがかかる場合があるので、借りる際には注意が必要です。

「スケルトン」とは、店舗内装設備などが何にもない状態

一方、「スケルトン」とは「骨組み」を意味し、建物の躯体だけの状態をいいます。物件を借りた当時の状態にする「原状回復/原状復帰」がなされ、店舗内装設備・什器・備品といった造作物が何もない状態、つまり、コンクリート打ちっぱなし、骨組みだけの状態が「スケルトン物件」です。

物件によっては内装設備類が一部だけ残っている場合でも、「居抜き物件」と呼ぶことがあり、また「一部居抜き」「半スケルトン」と表現されることがあります。

低コストと早期開業(開店)の「居抜き物件」

カレンダーと砂時計と電卓

「居抜き物件」と「スケルトン物件」の違いが分かったところで、まずは「居抜き物件」のメリット・デメリット、物件を選ぶ際の注意点について確認していきましょう。

「居抜き物件」のメリット

「居抜き物件」を選ぶ最大のメリットは、店舗の内装設備などが残っていること必要なものを一式揃えるとなると時間もお金もかかりますが、残されている造作物をそのまま使うことができれば、低コストかつ早期開業(開店)が可能になります。

1)出店コストが大幅に抑えられる

店舗の内装を一から作り上げ、必要な設備を揃えるにはかなりのコストがかかります。特に、大規模空調の大がかりな工事、厨房やトイレの水回りの工事は費用が高くなりがちです。

しかし、前テナントが使用していた造作物をできるだけ活用することで、内装工事・設備投資などの出店時にかかるコストを大幅に抑えられます。それは、店舗経営上の「損益分岐点」を下げられ黒字化しやすい店舗につながります。

⇒「損益分岐点」とは?

売上高と費用が等しくなり、利益、損失ともに出ないプラスマイナス0になるときの売上高のことを指します。(赤黒トントンという場合もある)黒字化するための達成するべき最低売上高のポイントです。売上高が損益分岐点を上回れば、利益が出て黒字に。逆に損益分岐点を下回れば損失が出て、赤字になります。

【利益】= 売上高 ー 総費用

【変動費】= 売上高の増減に伴って上下するコスト
(原材料費、仕入れ原価、販売手数料、運搬費、消耗品費etc.)

【固定費】= 売上高の増減に関わらず一定変化がないコスト
(家賃、人件費、水道光熱費、宣伝広告費、減価償却費etc.)

2)早期に開業(開店)できる

「居抜き物件」に残された造作物を活用し、改装工事を最小限にすることで工事期間が短縮され、早期開業(開店)が可能になります。賃料は、物件の契約後、入居日から発生するため、売上のない工事期間中も賃料(空家賃)が発生してしまいます。できるだけ早期の開業(開店)で無駄なコストを抑えられますね。

3)手間が少なく、時間を有効活用できる

一から内装をつくり上げていくなら、業者と何度も打ち合わせが必要になります。また、必要な設備や備品類を一式揃えるとなると、手間や時間がかかります。「居抜き物件」に残された造作物を活用することで、打ち合わせや、設備・備品類の準備にかかる手間が省け、開業(開店)までの時間を有効に使えます。

例えば、見込み客をつくるために、最寄り駅や店前、街頭でのチラシ配り。また、ソーシャルネットワーキングサービスと呼ばれるフェイスブックやツイッターといったSNSを使った宣伝や事前告知、営業活動、スタッフ教育、その他オペレーションに時間を費やすことができるのです。

このように、開業(開店)前に使える時間が増えることは大きなメリットですね。

4)前店舗に来ていた顧客を呼び込める可能性がある

新規開業(開店)の場合、はじめは認知してもらうのに時間がかかり、集客に苦戦することが考えられます。しかし、前店舗と業態や業種が同じ、または近いものであれば認知度が高く、店舗改装中から事前告知することで、前店舗に来ていた顧客を呼び込める可能性があります。

 「居抜き物件」のデメリット

ここまで「居抜き物件」のメリットについてご紹介してきましたが、一方で「居抜き物件」のデメリットは何でしょうか。あわせて確認していきましょう。

1)計画できるレイアウトに制限がある

基本的には前店舗のレイアウトをそのまま使うことが多いため、レイアウトを自由に変えることが難しくなります。できあがっているものを壊してつくり直す場合は、一からつくるよりもかなりのコストがかかってしまうことがあるので、慎重に検討する方がいいでしょう。

2)造作譲渡料がかかる場合がある

造作譲渡料とは「居抜き物件」に残された造作物を、現借主から新たな借主が買い取るための費用のことです。費用は内装設備の性能や使用年数だけでなく、売り手の希望や事情、立地条件や集客力などを加味した、物件の価値によって設定されることが多いです。事前にその立地での相場などを確認し、交渉を進めていくといいでしょう。

物件によっては、造作譲渡料無償のケースもありますが、「造作貸与」や「リース契約」でないかもあわせて確認しましょう。

3)内装設備などの不具合

「居抜き物件」で引き継いだ内装設備類は「中古」のため、老朽化や予期しない不備などが原因で、不具合が起きる可能性があります。設備が古いと説明書や保証書が残っていないことが多く、設備の購入時期やメンテナンス時期、どの程度の寿命かわからず、結果的に改修、撤去、修理費用といった想定外のコストがかかってしまうこともあります。

そういったトラブルを避けるためにも、内装設備は物件契約前にできるだけ細かくチェック、動作確認を行いましょう。

【確認ポイント】

  • 機材の製造年月日
  • 修理履歴
  • 説明書や保証書の有無

4)前店舗の印象を引き継ぐ

「居抜き物件」では、前店舗の内装や外装を活用することで、よくも悪くも前店舗の印象を引き継ぐ傾向があります。そのため、前店舗と業態や業種が同じ、または近いものであれば、似たような雰囲気になってしまうことで新規開業(開店)のインパクトに欠けてしまうこともあります。

前店舗の印象がよくない場合には、集客しにくくなる可能性があるので、物件契約前にできるだけ前店舗の印象や撤退理由を確認することが重要です。事前告知や宣伝では経営者が変わることを周知し、イメージを一新しましょう。

「居抜き物件」を選ぶ際の注意点

「居抜き物件」を選ぶ際は、内装設備・立地などをしっかり確認することが、計画をすすめるうえでとても重要になります。可能であれば天候の違う複数回の内見をし、確認しましょう。

内見する際の確認ポイント
 ◆ インフラ設備、容量の確認

 ◆ 空調設備、水回りの確認

 ◆ ダクトの有無と位置

 ◆ 内装設備、什器などの状態、動作確認

 ◆ 設備などの説明書・保証書の有無

 ◆ 前店舗の印象、撤退理由

 ◆ 昼夜の近隣環境、立地

 ◆ 物件外の整備状態

 ◆ 契約内容の確認

  (引き継ぎ対象、リース契約の有無、残債有無、修繕負担、原状回復義務etc)

以上のように「居抜き物件」を内見する際には確認ポイントがたくさんあります。内見は短時間で行われることが多いですが、物件をしっかり確認、比較・検討するためにも、以下アイテムを持参し記録、撮影をしましょう。

【内見時にあると便利なアイテム】

  • カメラまたはスマホ
  • 筆記用具
  • メジャー
  • 懐中電灯

オンリーワンを目指すなら「スケルトン物件」

背中に羽を背負って飛行士のゴーグルをつけた男の子

では次に「スケルトン物件」のメリット・デメリット、物件を選ぶ際の注意点について確認していきましょう。

「スケルトン物件」のメリット

「スケルトン物件」を選ぶ最大のメリットは、何もない状態のため、設計やデザインの融通がききやすく、こだわってつくりあげられること他店舗との差別化が図りやすく、経営者の理想を限りなくかたちにしたオンリーワンの店舗にすることが可能です。

1)店舗設計の自由度が高い

「スケルトン物件」は、「居抜き物件」とは反対に何もない状態のため、店舗内装設備、什器、備品など、全て自由に造作ができます。また店舗内装一つにしても選択肢が多いため、とことんこだわり抜いた理想的な店舗、オンリーワンの店舗にすることが可能です。

ひとつひとつこだわってつくり上げた店舗は、とりわけ思い入れや愛着が強い店舗になりやすく、それが後押しとなり熱意にもつながっていくことでしょう。また、導線を加味し、スペースの無駄を省いたレイアウトに設計できるので、店舗運営も効率化されます。

2)設備の管理がしやすい

設備を新規導入した場合は、説明書や保証書が揃っており、メンテナンス時期も把握できます。万が一故障しても、保証期間や仕入れ先などの情報が明確なため、早期に対応することが可能です。

3)期待とインパクトを与えられる

「スケルトン物件」は店舗のレイアウト、内装から外装まですべて新しくなるので、前店舗の印象を払拭でき、清潔できれいな店舗になり、顧客に「新しくできた店舗」という期待とインパクトを与えられます。

4)「居抜き物件」よりも安くすむ場合がある

「居抜き物件」と比較して、「スケルトン物件」が必ずしもコストがかかるとは限りません。「居抜き物件」では、物件の状態や、前店舗との業態や業種の違いなどから、残されている内装設備が活用できない場合があります。そのため不必要な設備の撤去や新設備の設置、改装と余分なコストがかかってしまうこともあるのです。

方、「スケルトン物件」では、内装設備・造作物を一からつくることができるため、居抜き物件に比べ不必要なコストを抑えられます。

「スケルトン物件」のデメリット

ここまで「スケルトン物件」のメリットについてご紹介きましたが、一方で「スケルトン物件」のデメリットは何でしょうか。あわせて確認していきましょう。

1)費用がかかる

「スケルトン物件」は、店舗内装設備・什器・備品など、とことんこだわれるのはメリットですが、大がかりな内装工事や必要な設備の導入など、膨大なコストがかかります。

 

2)開業(開店)までに時間がかかる

内装工事や水回りの工事が必要になるため、店舗の賃貸契約をしてから開業(開店)までに時間がかかります。売上のない工事期間中も賃料(空家賃)は発生しているので、工期が長くなると、その分赤字になってしまいます。

3)店舗の認知に時間がかかる

新規開業(開店)の場合、はじめは認知してもらうのに時間がかかり、集客に苦戦することが多いです。早期に認知してもらうためにも、チラシ配りやSNSを使った事前告知はもちろん、ある程度の費用をかけて折込チラシやWEBチラシで開業(開店)を告知するなど、販促活動を強化する努力が必要です。

4)退去時にもコストがかかる

「スケルトン物件」は「原状回復/原状復帰」契約の場合、退去時には借りた当時の状態に戻さなくてはならないため、解体工事などのコストが発生します。したがって、内装設備などにこだわった分、それらを解体するコストがかかるのです。

「スケルトン物件」を選ぶ際の注意点

「スケルトン物件」は内装設備がないため、「居抜き物件」に比べて内見する際の注意点は少ないです。

内見する際の確認ポイント
 ◆退去時の「原状回復/原状復帰」について

   (義務があるか、原状回復/原状復帰の範囲や負担責任、解約予告期間etc.)

ですが、「スケルトン物件」は大がかりな工事になることから、工事中の注意点がいくつかあります。

工事中の注意点
 ◆工事が予定通り、設計通りに進んでいるか現場に足を運び確認する

   (複数施工業者との食い違いトラブルを回避し円滑に進めるため)

 ◆ご近所への挨拶回り

   (騒音や振動、工事車両での通行の妨げなどからのトラブルを防ぐ)

上記にあわせて、施工業者との打ち合わせの際、食い違いや口約束のトラブルを回避するためにも、打ち合わせ内容はすべて日付をいれてメモに残しておきましょう。

特に、工事内容の追加や変更があった場合、それに伴う工期の延長や追加コストの発生などの詳しい内容をその都度必ず書面で確認、残すようにしましょう。また、詳細な設計図面を作成してもらい、その図面をもとに打ち合わせや確認をすることで、食い違いを回避し、完成後のイメージがしやすくなります。

「居抜き」「スケルトン」どちらにするにしても基本的には限られた予算内で内装工事の内容を検討することになります。

設計会社との打ち合わせの際、事前に「予算の上限」「内装工事の優先順位」を伝えておくと、その範囲内で実現可能な提案をしてもらえるため、時間と労力の無駄がなく、また予算と理想を両立した計画が進めやすくなります。

「居抜き物件」「スケルトン物件」どんな場合に向いている?

ここまでご紹介した「居抜き物件」と「スケルトン物件」について、メリット・デメリットの一覧と、参考までにどちらの物件がどんな場合に向いているかをまとめてみました。

【メリット・デメリット一覧】

物件の種類 メリット デメリット
居抜き ・出店コストが大幅に抑えられる

・早期に開業(開店)できる

・手間が少なく、時間を有効活用できる

・前店舗に来ていた顧客を呼び込める可能性がある

・計画できるレイアウトに制限がある

・造作譲渡料がかかる場合がある

・内装設備などの不具合

・前店舗の印象を引き継ぐ

スケルトン ・店舗設計の自由度が高い

・設備の管理がしやすい

・期待とインパクトを与えられる

・「居抜き物件」よりも安くすむ場合がある

・費用がかかる

・開業(開店)までに時間がかかる

・店舗の認知に時間がかかる

・退去時にもコストがかかる

【居抜き/スケルトン どんな場合に向いている?】

こんな場合は「居抜き物件」がおすすめ!

◎資金的リスクを抑え、低コストで開業(開店)したい

◎早期開業(開店)をしたい

◎初めての開業(開店)

こんな場合は「スケルトン物件」がおすすめ!

◎ひとつひとつこだわったオンリーワンの店舗を目指したい

◎資金や時間に比較的余裕がある

◎開業(開店)経験がある

まとめ

開業(開店)計画のイメージは膨らんできたでしょうか?

どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらがいいとは決めにくいかもしれません。一概に絞りすぎず、さまざまな物件をみていくことが重要です。目先のことだけにとらわれると、想いやコンセプトがブレて開業(開店)計画が失敗してしまいます。

そんなことがないように、まずは先入観なく、基本コンセプトと戦略をしっかり決め、明確にしましょう!その上で、優先したいことの中からどちらが適しているかを慎重に検討するとよいでしょう。

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